産業用無線リモコン「テレコン」とは


産業用無線リモコンとは

産業用無線リモコンとは、クレーンやホイストなどの産業機械を、安全に遠隔操作するための無線制御装置である。通信異常時には安全側へ停止する設計(フェイルセーフ)を前提とし、産業用途に特化した耐環境性と信頼性を備える。

  • 主な用途:クレーン、ホイスト、搬送設備、建設機械 など
  • 有線との違い:可動範囲が広い一方、電波干渉・通信断への安全設計が重要
  • 安全の要点:通信異常時に安全側へ停止するフェイルセーフ設計

日本国内では、令和6年(2024年)時点でクレーン等による労働災害が年間約1,500〜1,600件発生し、死亡者数は40人前後(日本クレーン協会クレーン協会統計データ)と依然高止まりしています。 特に「荷の真下立ち入り」「視界死角」「合図ミス」による死亡・重傷事故が問題視されており、人手不足・高齢化が加速するなか、安全性と効率化を向上させることが重要である。


産業用無線リモコンの定義

産業用無線リモコンとは、クレーンやホイスト、搬送設備などの産業機械を、離れた場所から安全に操作するための無線制御装置である。 一般的に「テレコン」とも呼ばれ、作業者が機械から距離を取りながら操作できることにより、安全性と作業効率の向上を実現する。 現場では、荷の振れ、視界の死角、作業導線の制約など、単純な「遠隔化」では解決しない課題が存在する。 産業用無線リモコンは、これらのリスクを低減するための安全装置として機能する。 家庭用の無線機器とは異なり、産業用無線リモコンは過酷な環境下での使用を前提とし、誤動作防止やフェイルセーフ設計など、安全を最優先に設計されている。

産業用無線リモコンは単なる操作器ではなく、制御系の一部として位置付けられる装置である。誤信号の防止、信号の整合性確認、通信異常時の停止動作などを通じて、機械側の安全回路と連携しながら動作する。そのため、単なる無線装置ではなく、誤操作や誤出力を考慮した、信号の信頼性と安全設計が最優先事項となる。

  ⇒ テレコンとはのページ


産業用無線の主な用途

産業用無線リモコンは、主に以下の設備で使用されている。

  • 天井クレーン、門型クレーン、ジブクレーン(工場・倉庫)
  • ホイストクレーン、チェーンブロック(中小型設備)
  • 搬送設備(搬送台車・トラバーサー)
  • 特殊産業機械(アンローダー、レードルクレーン、窓拭き用ゴンドラ)
  • 建設機械(ショベルカー、ブルドーザー、パイラー、トンネル掘削機)

②テレコン装置の使用環境
テレコン装置は、操作対象物を安全に無線で制御したい場合に使用します。さまざまな設備に使用されていますが、使用実績は以下のようなものがあり、この他にも多くの設備に使用されています。

テレコン装置搭載例

天井クレーン、リフティングマグネット付きクレーン、コイルリフター付きクレーン、ジブクレーン、タワークレーン、橋形クレーン、アンローダ、ケ-ブルクレーン、テルハ、ウインチ、スタッカークレーン、ホイスト、チェーンブロック、ブルドーザー、ローラー車、コンクリートポンプ車、トンネル掘削機、搬送台車、トラバーサー、窓拭き用ゴンドラ、ボーディングブリッジ、ディーゼル機関車、パイラー、開孔機、マッドガン、特殊車両、各種重機
ディーゼル機関車無線操作 タワークレーン無線操作 天井クレーン無線操作 ローラー車無線操作 クレーン無線操作 コンクリートポンプ車無線操作 クラムシェルクレーンを産業用無線リモコンで遠隔操作 高炉クレーン無線操作

特にクレーン用途では、下記の課題解決が大きい

  • 作業者が荷の真下に入らない
  • 視認性の良い位置で操作できる
  • 危険箇所から離れられる

従来は有線操作が主流であったが、作業範囲の拡大や視認性向上の必要性から、無線化が進んできた。


有線操作と無線操作の違い

有線操作は安定した通信が可能である一方、ケーブルの取り回しや作業範囲に制限がある。 無線操作は可動範囲が広く、作業者が安全な位置から操作できるという利点がある。 ただし、無線化に伴い、電波干渉や通信途絶といったリスクへの対策が不可欠となる。そのため、産業用無線リモコンでは、通信異常時に安全側へ動作を停止させる設計思想が採用されている。

有線操作は通信安定性が高いが、下記のリスクがある。

  • ケーブル断線
  • 可動範囲の制限
  • 引っ掛かり事故

無線化により可動範囲は広がるが、その代わり下記への対策が不可欠となる。

  • 電波干渉
  • 通信断
  • 誤信号
項目 有線 無線
可動範囲 制限あり 広い
通信媒体 ケーブル 電波
通信安定性 高い 設計次第
異常時対応 物理切断 検知して停止
主なリスク 断線・引掛り 電波干渉・通信断
電波干渉  なし  対策必要
コスト(機会費用) 本体価格が安価、ケーブル交換、ケーブル敷設費用 本体価格が高価、バッテリー交換費用、電波調査費用
環境限界   周波数による台数制限や、ノイズ環境による電波断
設計思想 物理的確実性 不確実性を検知し制御

有線操作は物理的な接続により通信の確実性を担保する設計思想である。一方、無線操作は通信の不確実性を前提とし、その不確実性を検知し、安全側へ制御する設計思想である。つまり両者の違いは「媒体の違い」ではなく「安全設計のアプローチの違い」にある。

どちらが優れているかではなく、用途に応じた選択が重要である。


安全を確保する原理

産業用無線リモコンは、通信の不確実性を前提とし、異常を検知した場合に安全側へ動作を停止させる構造を持つ。信号の整合性確認や誤信号防止機構を組み合わせることで、安全性を確保している。

  • 各種インターロック機構による誤操作防止(電源投入時SWが入っていないか、左右の信号が同時に入っていると信号オフなど)
  • 各種フェイルセーフフールプルーフ設計
  • 誤り確認符号を無線信号へ追加することによる誤り防止
  • 受信装置への固有番号の割り当てによる、異なった対象を動作させることの防止


フェイルセーフとは

フェイルセーフとは、機器に異常が発生した場合でも、危険な状態にならないよう安全側に動作させる設計思想である。 産業用無線リモコンにおいては、通信断や電源異常、内部故障などが発生した場合に、機械を停止させる仕組みが求められる。 これは単なる便利な遠隔操作機器ではなく、安全装置としての側面を持つためである。

産業用無線リモコンにおいては、以下の状況が想定される:

  • 通信断
  • 電源喪失
  • 内部回路異常
  • 外部電波干渉

これらが発生した場合、機械は停止するという動作が基本となる。

例えば、クレーン操作中に通信が途絶えた場合、巻上げ動作を継続させるのではなく、直ちに停止させる設計が求められる。これは「動き続けるより止まるほうが安全」という原則に基づく。フェイルセーフは利便性を優先する設計とは異なり、安全を最優先にした設計思想である。

具体的な安全対策例

具体的な故障モード:(例:リレーの溶着、信号の混信)

  • 一定時間信号が受信できない場合の自動停止
  • 二重信号確認による誤動作防止
  • 非常停止ボタンの独立回路化
  • 冗長設計による単一故障対策


構成要素

  • 制御器・送信機・移動端末(操作側)
  • 受信装置・固定端末(制御側)
  • 安全回路
  • 無線通信モジュール
  • 非常停止回路

これらのほか、ベルト、ストラップ、充電器、電池、ロガー装置などから構成される。


無線規格

産業用無線装置は、日本では、300MHz、429MHz、900MHz、1200MHz、2400MHzなどの無線免許が不要な特定小電力帯や、微弱無線局が多く使われる。その中でも、多くの無線通信が同時に使われると無線周波数が重複し通信が不安定になるため、重要設備では、300MHz、429MHz、1200MHz、が使われる傾向にある。

無線は一般的に周波数が高いほど直進性が強くなるため、障害物の有無、周辺で使われている無線設備の有無、到達距離などから適切な周波数を選定する。また、2400MHzは、同時に多くの無線設備を使用できるようにされた規格であるため、比較的同時使用には強い周波数帯である。


無線に関する資格・免許

クレーンの操作を行う場合は、クレーン操作の資格が必要になりますが、無線に関する免許や登録は不要です。 具体的には、当社の製品の、特定小電力429MHzや1.2GHzの無線は 技術基準適合証明(技適)が必要となりますが、当社であらかじめ取得申請を行っておりますので、ご購入後の手続きは不要となります。

技術基準適合証明の登録状況は総務省の技術基準適合証明等を受けた機器の検索で確認できます。

 

双方向通信とは

従来の無線リモコンは、送信機から受信装置へ一方向に信号を送る方式が一般的であった。 現在では、受信装置から送信機へ状態情報を返す「双方向通信」が普及している。 これにより、バッテリー残量や機械の状態を操作側で確認でき、誤操作の防止や保守性の向上が可能となっている。

双方向通信は単なる“高機能化”ではない。

  • 受信装置が本当に動いているか
  • 非常停止が有効か
  • バッテリーが安全か
  • エラー検知は出ていないか
  • フィードバックの表示で制御対象の状態はどうなっているか

などを確認できることが重要で、状態確認ができることで、作業者は「見えない不安」から解放される。

双方向通信の本質は、操作が確実に伝達されたことを確認できる点にある。操作信号が届いたかどうかを確認できない制御は、安全設計上の不確実要素となる。状態フィードバックにより、操作の成立を確認できることは、安全管理の観点からも重要である。


安全規格とは

産業用無線リモコンは、各国の安全規格や電波法規制に適合する必要がある。 特にクレーン用途では、安全カテゴリや機能安全の考え方が重要となる。 機能安全の分野では、危険事象が発生した場合に安全を確保できる構造を設計段階から組み込むことが求められている。

機能安全の考え方では、危険事象が発生した際に安全状態へ移行できる構造が求められる。安全カテゴリや冗長設計の概念は、誤動作や単一故障によって危険状態が継続しないようにするための設計思想である。産業用途では、これらを踏まえた設計が前提となる。

産業用リモコンとしての安全規格では、ISO 13849-1, IEC 61508 などが参照される。

  ⇒ テレコンの製品品質ページ

  ⇒ 寄稿ページ


製品品質

産業用無線機器は、民生用の無線機器や、ホビー用の無線機器と違い、誤動作が大事故につながり人命にも影響を及ぼす。また使用環境はほかの用途と比較して過酷な場合が多く、設計段階からFMEAなどの手法を用い安全性を十分に検討し設計する。 また、環境試験において、百万回以上の耐久試験など、使用環境を想定し近い環境を想定した試験を行っている。

  ⇒ テレコンの製品品質ページ


産業用無線リモコンの歴史

産業用無線リモコンは、作業効率向上と安全性向上を目的として発展してきた。 初期はアナログ回路を用いた大型のコントローラーであったが、デジタル回路を用い、小型化が進み、無線通信も、単純な一方向通信から、現在では双方向通信や冗長設計など、高度な安全思想が取り入れられている。 今後は、より高度な機能安全やデジタル化との融合が進むと考えられている。

また、製造業や、建設現場での安全性の高まりや、効率性の向上、人手不足、などから、無線化は推進されてきた歴史があり今後もこの流れは変わることがないと考えられている。

  ⇒ テレコンの歴史ページ


FAQ

Q. 産業用無線リモコンと家庭用無線リモコンの違いは?
A. 産業用はクレーン等の安全運用を前提に、誤動作防止・耐環境性・通信異常時の停止(フェイルセーフ)などを重視して設計されています。家庭用は利便性が主目的で、安全カテゴリやフェイルセーフ要件が前提ではありません。

Q. 無線なのに安全を確保できる理由は?
A. 通信断・電波干渉・機器異常を検知した場合に「安全側へ停止」する設計(フェイルセーフ)と、双方向通信による状態監視、誤信号を防ぐ仕組みを組み合わせることで安全性を確保します。

Q. 有線より無線の方が安全か?
A. 優劣ではなく、用途と設計思想によって選択される。

Q. 無線が途切れたら危ないのでは
A. 無線が受信できなくなると一定時間後に信号出力が停止するように設計されている。つまり、電波断により設備が停止しては困る場合は、無線を使わないか、設備側で電波断時の挙動を組み込んでおく必要がある。

  ⇒ テレコンのFAQページ


関連用語

  • フェイルセーフ:異常時に安全側へ動作させる設計思想
  • 双方向通信:受信装置から操作側へ状態を返す通信方式
  • 機能安全:危険事象発生時に安全を確保する設計概念
  • 安全カテゴリ:安全回路の信頼度を示す区分

  ⇒ テレコンの用語集ページ


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